ご挨拶

近年世界的にアニマルウェルフェアへの関心が高まり、愛玩動物・産業動物・野生動物・実験動物・展示動物など各分野において、アニマルウェルフェアへの取り組みが為されています。動物の健康の維持・増進や良好なQOLの達成は、「持続可能な開発目標(SDGs)」に言及されている生物多様性の保全ともかかわるもので、人のそれと同様に喫緊の課題です。アニマルウェルフェアの根幹は前述の動物のカテゴリーにおける制限条件の下で、種・系統のそれぞれにとって「自然な状態」を最大限に担保した上で、動物の健康と良好な生活環境の維持・増進を図るところにあります。さらに、「One Health」の概念が提唱するように、動物の健康と良好なQOLは生態系の健全さや、生態系を共有する人の健康と良好なQOLに繋がり、アニマルウェルフェアの推進は直接的間接的に人の福祉増進に資するものであると考えます。

動物の健康の維持増進、良好なQOLの達成を図るひとつの方向性として、幼齢・若齢から老齢に至る全段階で疾病やその発症前段階として注目されている「未病」、またはその予兆を早期に発見・診断し未然に予防するか、早期に治療または重症化防止を実施すること、すなわち疾病予防はきわめて重要なものであると考えられます。これらは冒頭に述べた様々なカテゴリーの動物のすべてに当てはまる考えであり、人の健康・福祉と予防医学に資するものと考えます。

動物と人の健康増進と良好なQOLの達成のためには、動物カテゴリー毎に特有な課題の解決が必要であり、コアな動物医学(獣医学)・医学のみならず多種多様な周辺領域の知識・経験・最新知見の集大成が求められます。たとえば、食品(成分)や栄養成分の健康に有用な機能を利用した動物と人の健康の維持増進と良好なQOL達成のためにはこれまでも多くの試みが実施されてきています。しかしながら、「機能性食品」やサプリメントなどによる健康の維持増進を図る上では人を対象とする場合においても多くの解決すべき課題があり、物言わぬ動物を対象とする場合においてはそれらに加えて動物特有の様々な課題があると考えられます。これらの解決のためには、関係する分野の産官学のリソースを結集して当たる必要があると考えます。食品(成分)や栄養成分の健康に有用な機能性と安全性について、人ではin vitro実験や動物実験の結果を外挿してさらに「人臨床試験」を実施して判断していますが、動物での有用機能性と安全性はこれらのデータや人での使用実績データを利用した「逆外挿」が利用できる可能性があります。この「逆外挿」による有用性検証の方法論を確立し、当該検証を実施するためには動物医学(獣医学)・医学・薬学・栄養学・食品機能学ほか多方面の基礎研究者、(動物)医療((獣)医療)臨床家、また(動物用)食品メーカーなどの協働作業が必須であると考えます。

このほか、動物の飼育環境の整備には動物カテゴリーそれぞれに特有な課題がありますが、それらの解決にも多方面の専門領域から得られる新しいアイデアを発展的に融合させる必要があります。

本「動物と人の予防医学研究会」の目的は、以上の背景に鑑み,多岐に亘る分野からの参加者が持つ知識・経験・アイデアなどを結集して動物と人の健康増進と良好なQOLの達成に繋がるイノベーションを図り、情報発信を行うことです。

2023年12月

動物と人の予防医学研究会 理事長

帝京平成大学健康医療スポーツ学部医療スポーツ学科動物医療コース

中江 大

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